テルアビブ在住の起業家仲間の寺田彼日氏に、読者の皆様のご参考になるような現地レポートをお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。課題に対して、解決しようとするスピードの速いイスラエルのスタートアップから学ぶことは多いと思います。ぜひ、ご覧ください。
本稿はテルアビブ在住の起業家 寺田彼日氏による寄稿である。寺田氏は2014年日本人として初のVC Backed StartupとしてイスラエルでAniwo Ltd.を創業。“Innovation for your smile”をMissionに新たな価値創出を加速させるプラットフォーム開発・運営に取り組んでいる。
2020年3月中旬から新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染拡大抑制を目的にスーパーマーケット、薬局、銀行、ガソリンスタンド等生活必需品を扱う店舗を除く商業施設や娯楽施設の営業停止が義務化され外出が制限されるロックダウン状態が続いている。
その状況下において多くのスタートアップがイスラエル保健省、医療機関、研究機関、IDF(イスラエル国防軍)と連携してCOVID-19の治療や感染拡大を防ぐ為に活動を進めている。本稿では、それらのスタートアップを紹介する。
下図はイスラエルのNPO Start-Up Nation Centralが発表したCOVID-19と闘うヘルスケア関連スタートアップのカオスマップだ。既に70社以上のスタートアップが、リモート診療、メンタルケア、感染予防、検査の領域で新たなソリューション提供・開発に取り組んでいる。イスラエルスタートアップの特徴として、大学や研究機関の知財や研究成果をコアにソリューションを開発するテックドリブンな企業が多く、それらのコア技術をCOVID-19対策に応用する形で迅速に展開している点が興味深い。
またイスラエルの保健省もスタートアップと連携して新たなソリューションの現場導入を積極的に推進している点から、イスラエルの産官学連携の強固さが見て取れる。
Source: Start-Up Nation Central (2020)
イスラエルは2020年4月建国72年を迎えた。この若い国家が短期間でイノベーション創出の中心地として世界をリードする地位を獲得した背景として、IDFの技術開発や人材育成面での貢献は無視できない。
IDFは複数のインテリジェンスユニットを擁し、コンピューティング、サイバーセキュリティ、航空宇宙、ドローン、自動運転、ロボティクス、医療領域等で先端技術の研究開発を進めている。有名なインテリジェンス部隊として8200部隊がよく挙げられるが、今回のCOVID-19危機では、これまで活動内容が公にされてこなかった81部隊(Unit 81)の活動が注目されている。
同部隊のミッションは国家が直面する緊急の危機、複雑な問題に対して実用可能なソリューションを短期間で生み出す事であり、COVID-19の緊急事態下では、人工呼吸器、特殊防護マスク、救急車内のパーティション、入院患者の管理ソフトウェアの開発等を急ピッチで進めて既に導入を始めている。
Source: IDF (2020)
Flytrex
FlytrexはこれまでアイスランドやUSのノースダコタ州でドローンによるデリバリーシステムの実用化を進めて来たが、今回のCOVID-19対応としてイスラエルのネタニヤ、ノースダコタ州のグランド・フォークスの2都市でスーパーマーケットの配送センターと連携し、消費者のもとへ生活必需品を届ける取り組みを始めている。
Source: Flytrex (2020)
Cyolo
外出制限で世界的にWork from Homeが進む中でネットワークやエンドポイントデバイスのセキュリティ懸念が高まっているが、CyoloはIDベースの識別であらゆる端末、ネットワークからセキュアなアクセスを実現するSaaSプロダクトを開発している。創業者は海軍のセキュリティ部隊出身で、リモートワークに軍隊レベルのセキュリティを手軽に導入出来るのが特徴だ。
Source: Cyolo (2020)
Hotelmize
株式市場の株価予測モデルを応用したホテルの宿泊料金の最適化ツールを提供する。ロンドン、バンコク、ブエノスアイレス、マヨルカでグローバルに展開しており、年間$2B以上の予約トランザクションを分析し最適化ソリューションを多数のホテル運営企業に提供してきた。COVID-19の拡大により旅行業界は大きな打撃を受けているがそのような状況下でAlibabaグループのファンド等から資金調達を実施し、人の動きが回復したタイミングでのホテルの価格最適化による売上及び利益最大化面での支援を目指す。
Source: Hotelmize (2020)
ワクチンや治療薬実用化を待たなければ以前の状況への復帰は困難というのが大勢の見方だが、経済活動再開も喫緊の課題となる。イスラエルでは徐々に外出禁止解除、学校の授業再開、商業施設の営業再開を進めていく計画で、年代毎の感染による重症化リスクに応じた行動制限、アプリを用いたトラッキング等により管理するとのことだ。世界的に苦しい状況が続くことが予想されるが、イスラエル発のスタートアップやソリューション、研究開発の成果が一人でも多くの人々の命を救う事を願いたい。
寺田さん、このような素晴らしいレポートをお伝えくださり、愛りがとうございました。
すでに、70社以上のヘルスケアスタートアップがCOVID-19と闘うために立ち上がっている事、非常に驚きました。また様々なジャンルのスタートアップもコロナの課題解決のためにご尽力されてるのを知り、感動しました。
日本人も、一人一人の持てる力を、積極的に課題解決のために活して行かなければなりませんね。
そして、この瞬間も、世界中、日本中の医療・福祉・介護施設で働かれてる皆様に、心より感謝申し上げます。
ブログ読者の皆様も、お気をつけて、Stay Home Week をお過ごし下さいませ。
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5月27日(水)【オンライン開催】Startup GRIND TOKYO
ゲスト:700名以上のリモートワーカーが在籍している、株式会社キャスター 代表取締役 中川 祥太氏
Forbes JAPAN :「イノベーション・エコシステムの内側」
りそな銀行 :「イノベーションの森」
りそな銀行 :「イノベーションの哲学」
日刊工業新聞 :「グローバルの眼」最新号 (Webでも紙面でも両方お読み頂けます)
山口新聞 :「東流西流」10月20日号(Webでも紙面でも両方お読み頂けます)
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